「アカウントがロックされました」という連絡は、情報システム担当への問い合わせで最も多いものの一つです。解除するだけなら数十秒で終わりますが、同じ人が何度もロックされる場合、解除を繰り返しても解決しません。この記事では、解除の手順と、原因を突き止めるための調べ方を分けて扱います。ロックが第三者の試行によるものかを確かめる手順は不正ログインを無料で確認する方法で扱っています。
まず解除する
Active Directory環境の場合
「Active Directory ユーザーとコンピューター」(dsa.msc)を開き、対象ユーザーのプロパティ →「アカウント」タブで「アカウントのロックアウトを解除する」にチェックを入れて適用します。
PowerShellの方が速い場合もあります。
Unlock-ADAccount -Identity ユーザー名誰がロックされているかを一覧で出すこともできます。
Search-ADAccount -LockedOut | Select-Object Name,SamAccountName,LastLogonDate朝の時間帯に複数人が同時にロックされている場合、個別の操作ミスではなく共通の原因があります。後述の「繰り返す場合」を確認してください。
ローカルアカウントの場合
ドメインに参加していないPCでは、別の管理者アカウントでログインして解除します。
net user ユーザー名 /active:yes管理者アカウントが1つしかなく、それがロックされた場合は詰みます。この状態は復旧に時間がかかるため、管理用のアカウントを別に用意しておく運用が必要です。考え方は 特権アカウントの管理で扱っています。
Microsoft 365 / Entra ID の場合
クラウド側のロックは、既定では一定時間の経過で自動的に解除されます。管理者による解除操作は不要なことが多く、パスワードのリセットを行えば即座に使えるようになります。オンプレミスのADと同期している場合は、ロックの発生元がどちら側かの切り分けが先です。
原因を特定する
解除だけで終わらせると、多くの場合また同じことが起きます。ロックの記録は必ずドメインコントローラーに残っています。
手順
- ドメインコントローラーでイベントビューアー(eventvwr)を開く
- Windowsログ → セキュリティ
- 「現在のログをフィルター」→ イベントIDに 4740 を入力
該当のイベントを開くと、「呼び出し元コンピューター名」という項目があります。ここに、失敗したログインを送っている端末の名前が入っています。これが原因特定の起点です。
PowerShellで直近の分をまとめて出すこともできます。
Get-WinEvent -FilterHashtable @{LogName='Security'; ID=4740} -MaxEvents 20 | Select-Object TimeCreated,Message続けて、その端末で何が起きているかを見ます。ロックの直前には必ずログイン失敗(イベントID 4625)が並んでいます。失敗の記録の見方は Windowsのログイン履歴を確認する方法にまとめています。
繰り返す場合に疑う5つの原因
本人がパスワードを間違えていないのにロックされる場合、ほとんどは次のどれかです。人ではなく機械が古いパスワードを送り続けています。
1. スマートフォンのメール設定
最も多い原因です。パスワードを変更したあと、スマートフォンのメールアプリに古いパスワードが残っていると、数分おきに自動で認証を試みて失敗を積み上げます。本人はPCで正常に使えているため、原因に気づきません。
呼び出し元コンピューター名が空欄だったり、見覚えのない名前だったりする場合はこれを疑ってください。
2. サービスやタスクスケジューラに埋め込まれたパスワード
サーバーで動いているサービスや定期実行のタスクに、ユーザーのIDとパスワードが設定されていることがあります。パスワード変更時にここを直し忘れると、実行のたびに失敗します。
人のアカウントをサービスの実行に流用しているのが根本原因です。切り分け方は サービスアカウントの管理で扱っています。
3. 別のPCにログインしたままになっている
会議室のPCや共用端末にログオンしたまま離席し、そのセッションが古いパスワードで再認証を試みるケースです。共用PCは誰が使ったか分からなくなりやすく、この問題が起きやすい環境です。対処は 共用PCの認証を参照してください。
4. マップされたネットワークドライブ
古い資格情報で共有フォルダに接続する設定が残っていると、起動のたびに失敗します。資格情報マネージャーに保存された古いパスワードが原因のことが多く、コントロールパネルの「資格情報マネージャー」から該当のエントリを削除します。
5. 実際に攻撃を受けている
上の4つに当てはまらず、複数のアカウントで同時にロックが起きている場合は、攻撃を疑ってください。特に、社外からアクセスできる状態のサーバーがある場合は可能性が上がります。
典型的なのは、よく使われるパスワードを多数のアカウントに1回ずつ試す手法です。1アカウントあたりの失敗が少ないためロックされにくく、気づきにくいのが特徴です。攻撃の形は 総当たり攻撃(ブルートフォース)と パスワードリスト攻撃で解説しています。
ロックアウトの設定値をどう決めるか
ロックアウトはグループポリシーで設定します。現在の値は次のコマンドで確認できます。
net accounts「ロックアウトのしきい値」「ロックアウト期間」「ロックアウトカウンターのリセット」の3つが表示されます。
| 項目 | 厳しすぎる場合 | 緩すぎる場合 |
|---|---|---|
| しきい値 | 打ち間違いでロックされ、問い合わせが増える | 攻撃者に試行回数を与える |
| ロックアウト期間 | 業務が長時間止まる | 攻撃を待つだけで再開できる |
ロックアウトを厳しくしても、パスワードそのものの強さは変わりません。攻撃者にとっては試行の速度が落ちるだけで、正しいパスワードを1回で当てられれば無関係です。設定値の決め方は グループポリシーでのアカウント保護設定と パスワードポリシーの設計で扱っています。
問い合わせ自体を減らす
ロックと同様に多いのが、パスワードを忘れたことによるリセット依頼です。どちらも、担当者の時間を継続的に奪います。本人による解除の仕組みや、パスワードに依存しない認証への移行で、件数そのものを減らせます。
窓口の運用は パスワードリセットの問い合わせ対応、認証方式の見直しは Windowsログインの二要素認証を参照してください。
よくある質問
ロックアウトの原因はどこを見れば分かりますか
ドメインコントローラーのセキュリティログにあるイベントID 4740です。「呼び出し元コンピューター名」に、失敗した認証を送っている端末が記録されています。
本人は間違えていないのにロックされるのはなぜですか
スマートフォンのメール設定、サービスやタスクスケジューラ、別PCの開きっぱなしのセッション、資格情報マネージャーに保存された古いパスワードのいずれかが、自動で古い認証情報を送り続けている可能性が高いです。
ロックアウトのしきい値は何回にすべきですか
一律の正解はありません。厳しくすると打ち間違いによる問い合わせが増え、緩くすると攻撃者に試行回数を与えます。自社の問い合わせ件数と、社外からの接続経路の有無を踏まえて決めてください。
自社の対応状況を確認するには
ロックアウトの多発は、パスワードだけに依存した認証運用の負荷が表面化したものです。解除の手間を減らすことと、侵入を防ぐことは別の問題です。applippliの無料診断では、約3分の質問に回答するだけで、ID・パスワードに関連する対応状況を5段階で判定し、結果をPDFレポートでお届けします。個人情報の入力は不要で、会員登録もありません。
参考・出典
- Microsoft Learn「アカウント ロックアウト ポリシー」
- Microsoft Learn「4740(S): ユーザー アカウントがロックアウトされました」
- 情報処理推進機構(IPA)情報セキュリティ
※ 本記事は2026年9月時点の一般的な解説です。画面の名称や既定値はWindowsのバージョン・エディションおよび適用されているポリシーによって異なる場合があります。実際の設定変更は、検証環境で確認のうえ実施してください。
