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2026年9月

Microsoft 365で多要素認証を全員に必須にする手順と、事前に潰すべき詰まりどころ

Microsoft 365 で多要素認証を必須にする作業そのものは、設定画面のスイッチを1つ入れるだけで済む場合があります。難しいのは設定ではなく、有効化した瞬間に止まる業務を事前に把握しておくことです。この記事では手順と、詰まりどころの潰し方を扱います。

方法は2つあります

セキュリティの既定値群条件付きアクセス
費用追加費用なし上位ライセンスが必要
設定の手間スイッチ1つポリシーを個別に作成
対象の除外できないユーザー・アプリ単位で可能
段階的な展開できない(全員一括)できる
併用同時には使えません。既定値群を有効にしている間は条件付きアクセスを使えません

まず押さえるべきは「除外ができない」点です。セキュリティの既定値群は全ユーザーが対象になり、例外を作れません。これが導入時に問題になる主因です。

ライセンスの条件は契約内容によって異なります。条件付きアクセスが使えるかどうかは、管理画面またはライセンスの内容をご確認ください。

有効化する前に潰しておくこと

ここを飛ばすと、有効化した直後に業務が止まります。順に確認してください。

① 複合機・スキャナからのメール送信

最も多い停止要因です。複合機のスキャン結果をメールで送る設定は、多くの場合ID・パスワードのみでメールサーバーに接続しています。

多要素認証を必須にすると、この接続が拒否されます。「スキャンしてメール送信」が全社的に使えなくなります。

対応としては、複合機を送信専用の別経路に切り替えるか、機器側が新しい認証方式に対応しているか確認する形になります。機種によっては対応しておらず、機器の更新が必要になる場合があります。

② 業務システムからの自動メール送信

受発注システムや勤怠システムが、Microsoft 365 のアカウントを使ってメールを送っている場合があります。①と同じ理由で止まります。

誰も設定を覚えていないことが多い箇所です。「システムから自動でメールが届いている」ものがあれば、送信元の設定を確認してください。

③ 古いバージョンのOutlook・メールソフト

古い方式でしか接続できないソフトは、認証が通らなくなります。更新が必要になります。

スマートフォンの標準メールアプリで社内メールを見ている場合も、設定の作り直しが必要になることがあります。

④ 共有メールボックス・代表アドレス

「info@」「support@」のような代表アドレスを、共有のID・パスワードで複数人が使っている場合は、先に方式を変える必要があります。

多要素認証は「本人が持っているもの」を使う仕組みなので、複数人が同じアカウントを使う運用と噛み合いません。誰の端末で承認するのかが決まらないためです。

置き換えの進め方は 共有アカウントの廃止で扱っています。

⑤ スマートフォンを持っていない人

認証アプリを使う前提だと、会社支給の端末がない人・私物の利用を拒む人が対象から漏れます。

代替手段は スマートフォンを使わない多要素認証で扱っています。

手順:セキュリティの既定値群を有効にする

上記の確認が済んだら設定します。全体管理者の権限が必要です。

  1. Microsoft Entra 管理センター(entra.microsoft.com)にサインイン
  2. 左メニューの 「ID」 を開く
  3. 「概要」「プロパティ」 タブ
  4. ページ下部の 「セキュリティの既定値群の管理」 をクリック
  5. 「有効」 に変更して保存

有効化すると、全ユーザーが次回サインイン時に認証方法の登録を求められます。登録の猶予期間は設けられますが、最終的に登録しないとサインインできなくなります。

周知を先に行ってください

予告なしに有効化すると、問い合わせが情報システム担当に集中します。次の内容を事前に伝えておくと、負荷が大きく下がります。

  • いつから始まるか
  • 何を求められるか(スマートフォンでの認証アプリの設定など)
  • 設定にかかる時間(数分程度)
  • うまくいかない場合の連絡先

緊急時に入れなくなる事態を避ける

これは必ず考えておく必要があります。

管理者が認証用の端末を紛失・故障させた場合、管理画面に入れず、設定を戻すこともできなくなります。

対策として、

  • 管理者権限を持つアカウントを2つ以上用意し、それぞれ別の端末で認証できる状態にする
  • 認証方法を2種類以上登録する(アプリと電話番号など)

セキュリティの既定値群では除外を作れないため、「管理者だけ対象外にする」という逃げ道はありません。複数の管理者アカウントで冗長化する形になります。

有効化したあとに確認すること

  • 複合機からのスキャン送信が動くか
  • 業務システムからの自動メールが届いているか
  • 登録が完了していないユーザーが残っていないか
  • サインインの失敗が急増していないか

2つ目は数日たってから気づくことが多い項目です。日次や週次で動くバッチ処理は、有効化の直後には現れません。

ログの確認方法は 不審なログインの確認方法を参照してください。

これで守れない範囲

Microsoft 365 の多要素認証は、Microsoft 365 へのサインインを守るものです。次は対象外です。

  • PC本体へのWindowsログイン
  • 社内のファイルサーバーへの接続
  • Microsoft 365 と連携していない業務システム

PCのログインパスワードが盗まれた場合、端末内に保存されたファイルは守られません。ここは別の手当てが必要です。

WindowsのOSログインに二要素認証を入れる方法 シングルサインオンの基本と限界で扱っています。

よくある質問

Microsoft 365 の多要素認証は追加費用がかかりますか

セキュリティの既定値群であれば追加費用なしで有効にできます。ユーザーやアプリ単位で細かく制御する条件付きアクセスは、上位のライセンスが必要です。

特定の人だけ対象外にできますか

セキュリティの既定値群では除外を作れません。除外が必要な場合は条件付きアクセスを使うことになり、上位ライセンスが前提になります。

有効化して業務が止まる可能性が高いのはどこですか

複合機・スキャナからのメール送信です。ID・パスワードのみで接続している場合、有効化した時点で拒否されます。業務システムからの自動送信も同じ理由で止まります。

有効化したあとに残る2つの宿題

多要素認証を必須にしても、それだけでは閉じない経路と、新たに生まれるリスクがあります。有効化の作業が終わったら、続けてこの2つを確認してください。

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