岡山県精神科医療センターのランサムウェア被害|調査報告書が挙げた「全コンピューター同一の管理者パスワード」と水平展開

2026年10月公開株式会社アプリップリ編集部

Windowsのログインまわりのソフトを開発・提供している会社が、中小企業の情シス・総務担当の方に向けて書いています。

この記事の要点

  • ✓侵入原因は、保守用SSL-VPN装置の脆弱性の放置と、推測可能なID・パスワードの使用などと推定されています
  • ✓院内での水平展開の原因は、全コンピューターの管理者ID・パスワードが同一だったことと、一般ユーザーへの管理者権限の付与です
  • ✓2022年の大阪の事例とほぼ同じ構造です。入口とは別に、入られた後に広げさせない備えが要ります
目次(タップで開く)

    2024年5月、岡山県精神科医療センターはランサムウェア攻撃を受け、電子カルテを含む総合情報システムに障害が起きました。同センターが設置した第三者調査委員会は2025年2月に調査報告書を公表し、岡山県も県内の医療関係団体に、今後の対策の参考とするよう周知しています。

    この記事では、岡山県が示した報告書の概要をもとに、侵入と院内での広がりの原因を整理します。

    報告書が推定した2つの原因

    報告書の概要は、原因を「ネットワークへの侵入」と「ネットワーク内での水平展開」に分けて推定しています。

    ネットワークへの侵入原因

    • 保守用SSL-VPN装置の脆弱性の放置
    • 推測可能なID・パスワードの使用など

    ネットワーク内での水平展開の原因

    • 全コンピューターの管理者ID・パスワードが同一だったこと
    • 一般ユーザーに管理者権限を付与していたことによる、ウイルス対策ソフトの停止など

    背景として、センターとシステムベンダーの厚生労働省ガイドラインへの理解不足、過去のサイバー攻撃事例の軽視、閉域網(限られた利用者だけがアクセスできるネットワーク)への過信が挙げられています。

    「水平展開」はログインの繰り返し

    水平展開(横展開)とは、最初に入った1台から、社内の他のコンピューターへ次々に入っていくことです。全コンピューターの管理者ID・パスワードが同じなら、攻撃者は1台で手に入れた管理者のパスワードで、他のすべてのコンピューターに管理者としてログインできます。

    2年前と同じ原因

    2022年の大阪急性期・総合医療センターの事例でも、調査報告書は「Windowsのパスワードがサーバー・端末ごとにすべて共通」「ユーザーすべてに管理者権限」を横展開の原因に挙げていました(大阪急性期・総合医療センターの事例)。報告書が「過去のサイバー攻撃事例の軽視」を原因に含めたのは、このためだと考えられます。

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    再発防止策から読み取れること

    報告書は、厚生労働省ガイドラインに基づく技術的対策として、次の2つを分けて挙げています。

    • 侵入防止:VPN装置の脆弱性修正プログラムの即時適用、パスワードの複雑化など
    • 水平展開の対策:パスワードの使い回しの禁止、管理者権限の限定的な付与など

    「入られないこと」と「入られた後に広げさせないこと」を、別の対策として扱っている点が重要です。VPN装置の脆弱性は、修正版が出る前に悪用されることもあります。入口がいつか破られる前提で、社内のログインを固めておく必要があります。

    パスワードの使い回しをやめ、管理者権限を絞ることに加えて、社内のPC・サーバーのログインに2つ目の要素を加えておけば、1台で盗まれた管理者のパスワードだけでは、他のコンピューターにログインできなくなります。

    社内のWindows PC・サーバーへのログインを、社員のスマホでのワンタッチ承認にできます。管理者のパスワードを1台で盗まれても、それだけでは他のコンピューターにログインできません製品サイトを見る(アプリップリキー)

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    他の事例:侵入経路と、入られた後の広がり方

    公表資料をもとに整理した他の事例です。入口はそれぞれ違っても、入られた後にPC・サーバーへのログインで広がる点は共通しています。

    • アサヒ — ネットワーク機器から侵入、管理者権限を奪われ約10日間サーバーへのログインが繰り返された
    • アスクル — 多要素認証のない委託先の管理者アカウントから侵入、サーバーの認証情報を集めて移動
    • 大阪急性期・総合医療センター — 給食委託先のVPNから侵入、全サーバー共通のWindowsパスワードで横展開
    • オーミケンシ — 盗まれた認証情報でVPNから侵入、サーバーとファイルサーバーが暗号化
    • 両毛システムズ — VPNアカウントの悪用で侵入、委託元の情報にも影響
    • フェース — VPN機器から夜間に侵入、社内のサーバーとPCが操作された
    • 第一興商(委託先) — 委託先のPC1台の感染で872万件が漏えいのおそれ

    出典

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    水平展開の原因は、全コンピューターで同一の管理者パスワードでした。自社のPC・サーバーのログインがどうなっているかを10問で一覧にできます。

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    この記事を書いた会社

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    アプリップリキーは、Windowsのログインをスマートフォンのワンタッチにする国産ソフトです。パスワードを覚えて打つ運用をなくし、誰がいつPCを使ったかを記録に残します。

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